灰崎の自由空間

アラサー陰キャ・ぼっち・非リア・コミュ障の男が趣味で文章を書いてます。

謎多き同級生

中学・高校時代、気軽に話ができた同級生が2~3人居たような気がする。今回はその内の1人(ここでは谷垣と呼ぶ)について書いてみようと思う。

 

彼は落ち着いた性格をしていて、僕にとっては珍しく、こちらから話しかけることができる人物だった。ただ、彼には謎が多かった。家が金持ちだとか、他校に恋人がいるとか、実はスポーツクラブに所属していて運動神経が良いとか、真実か嘘かよくわからない噂があった。本人が発する言葉も、どこまでが本当なのか僕自身も上手く判断できなかった。このような謎めいた雰囲気を醸し出していたためか、同級生の中では「谷垣を怒らせたらまずい」という共通認識があったような気がする。彼の謎については、個人的には正直どうでも良かった。自分には何の影響もないし、気軽に話ができればそれで満足だった。

 

谷垣については印象に残っている思い出がある。高校生の頃の冬休み、突然メールで「ライブを見に行かないか」と誘われたのだ。僕は少し迷ってからOKの返事を出し、その日の夜に谷垣とライブを見に行った。ライブの内容についてはあまり覚えていない。会場に入るまでにえらく時間がかかったこと。会場のスタッフが少し怖かったこと。アーティストが豆粒くらいの大きさで辛うじて視認できたこと。覚えているのはこれくらい。では何故印象に残っているのかというと、単純に珍しい出来事だったからだ。自分には1対1で遊ぶという経験がほとんど無かった。なので、こうしてわざわざ僕を選んで誘ってくれたことがとても嬉しかった(普通の人にはおそらく理解してもらえないだろうけど)。彼は何故僕なんかを選んだのだろう。単なる気まぐれだったのだろうか。そんなことを10数年経った今でも時々考える。

 

谷垣とはもう10年は会っていない。最後に会ったのは、大学時代に彼が開催してくれた飲み会の場だった。「また今度飲み会を企画する」と言って別れた覚えがあるが、それから一度も連絡は来ていない。何らかの理由をつけて彼にメールを出してみたことがあったのだが、既にアドレスが変更されていたようで、エラーが返ってきてしまった。彼の電話番号もLINEのIDも分からない。他の知り合いも、谷垣の連絡先は誰も知らないらしい。もう一生、彼と会うことは無いのだろうか。唯一の友人として交友関係が続いていたとしたら、僕の人生はどう変わっていたのだろう。